令和3年 東日本大震災震災避難者支援活動 新聞記事
震災私たちの10年 ~ 役割終える日夢見て ~
被災地、そして山梨から
2月下旬、中央市若宮のレストラン。 東日本大震災後、福島県や宮城県から山梨県内に避難した6人が弁当を食べながら、会話を楽しんでいた。「仕事はうまくいってる?」「この前の地震は大丈夫だった?」。主催した「東日本大震災・山梨県内避難者と支援者を結ぶ会」事務局長の藤原行雄さん(68)=山梨市小原東=が、優しく声を掛けた。結ぶ会は、東日本大震災から半年後の2011年9月に山梨福島県人会のメンバーを中心に発足。県や県キャリアコンサルティング協会などのメンバーで構成し、避難者と各地の支援団体を橋渡しする活動を続けてきた。キャリアコンサルタントの藤原さんは、発足当初から参加している。
交流の場
15年6月からは避難者同士が交流する場を設けようと、藤原さんが幹事となって交流会を開催。毎月10人ほどが参加し、互いに家族の様子や仕事などの近況報告をしている。 これまで開催した交流会は回を数え、避難者からは「日々の支え」「横のつながりができて心強い」との声が上がる。結ぶ会は年1回、避難者の実態を把握するためのアンケートを実施。必要な支援や相談できる知り合いの有、睡眠や食欲の状況などを聞き取り、データ化している。3、4年のアンケートでは山梨への永住を希望する世帯が2年連続で10%を超え、「生活が落ち着いてきた印象」(藤原さん)という。一方で、県内に相談できる知り合いがいないと答えた世帯は4割近くに上り、現在も母子避難者や高齢者世帯からの就労や住居に関する相談が絶えない。 藤原さんは「周りとのつながりが希薄な世帯に対し、今後も食料支援や就労支援などを継続する必要がある」と指摘する。
最終目標
これまでの結ぶ会の活動について、「自分にできることを精いっぱいやってきた。 あっという間の10年だった」と振り返る藤原さん。「避難してきた当時は小さかった子どもたちが、成人して社会人になっている。 成長していく様子を見ると、うれしくなる」と笑顔を見せる。11日で震災発生から10年。ふるさとに戻ったり、県内で新たな生活基盤を築いたり、さまざまな道を歩んできた県内避難者。藤原さんは結ぶ会の「最終的な目標」についてこう説明する。「避難者からの相談や支援の要
望がなくなり、結ぶ会を解散すること。震災前の『普通の生活』に戻れるよう、これからも後押ししていきたい」