「学び直し」を考える その2

2月2日の講演会のつづきです。

講師の先生方のお話が終わった後は事業報告会を行いました。
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まず、今回この事業を行うに至った経緯を。
勉強を教えるだけでは、真の学習支援にはならないと私たちは考えています。
学習塾の月謝をお渡しすることでは、単に算数や英語の成績をあげるための学習支援になってしまいます。
当人の置かれた環境を理解し、受け入れたうえで、どんな人生を歩みたいのか、
そのために必要なことは何かを考えて、利用できるものや頼れる施策を組み合わせて、
戦略的にキャリアデザインする事が必要ではないでしょうか。
結果として、学習の大切さ、学び続ける事が環境を変える一番の近道であることを
子供たちが理解する…。これが真の学習支援だと考えています。
さらに、自分の周りには、頼れる大人、努力を認めてくれる人たち、が
たくさんいることを実感させることも…。

■成果(平成28年2月2日現在)
利用のべ人数 70人
学習成果の見られた人 4人(1.看護学校合格 2.就職決定 3.職業訓練受講決定 4.大学合格 といった直接的効果)

この人数は多いでしょうか?少ないでしょうか?
費用を支援人数で割った、一人当たりの支援額(ただし人件費は除く)は194万/70人=約28,000円/1回です。
塾の月謝の1か月分です。(塾なら1回5000円程度)
費用対効果は高いと思いますか? もっと効果的なお金の使い道があったでしょうか?

今、生活保護の受給者には月に145,980円の生活保護費が支給されています。(標準3人世帯(33歳、29歳、4歳))
40歳の生活困窮者、生活保護の方が就職されて、税金や社会保険料等を支払うことができるようになると、
65歳までの25年間で、生活保護費だけでも15万×12か月×25年=45,000,000円が、
さらに税金や保険料を支払うことで逆に生活困窮者を支援する立場にかわることになります。
生活困窮者の子供が学ぶことで、困窮の連鎖を断ち切ることができたら、その経済的価値は!

■課題
1.周知のむずかしさ
広報、特に新聞の効果は絶大でしたが、問い合わせの多くは60代でした。
子どもは広報や新聞を見ません。子ども、中退者やひきこもりに来てもらうにはほかの方法が必要です(口コミ、紹介など)
現在の利用者さんを大切に活動を進め、口コミから集客することが一番確実かもしれません。
チラシについても、本屋に掲示させていただくなど、
中退者などがふらっと行きそうな場所を考えなければなりません。
みなさんがお使いいただける材料のひとつとして、この事業を知っておいてもらいたい。
ですが、本当にこの場所が必要な方へ情報を届けるにはどうしたらいいのか…。
また、「生活困窮者」という言葉を掲げると来所者へのレッテル貼りになってしまいます。
どのような言葉で周知していくかもまだまだ考えなくてはいけません。

2.官公庁との連携
公助
 富士吉田市は小学生を紹介してくれました。そして、その子はお友達をつれてきてくれました。
 担当者との連携を密にし、「この人が紹介してくれたから行ってみよう」と
 思ってもらえるような関係を今後も構築していくことがとても重要です。
 市役所はもとより、学校、スクールカウンセラーなどとの連携も。
 富士吉田市内にもいくつか支援をしている場所がありますが、
 多くは対象が小・中学生 高校生を対象としているところは市内にはあまりありません。
 その自治体ですでに行われている支援とお互いがうまく補いあえるような形ができれば…。

民助
 ボランティアの助けが必須です。
 (英語を教えてくれます。と言ってくれる方。役場に勤務しながら土曜日に学習支援したいと申しいれてくれた方。)
 学校や塾のような時間の縛りがないので、時間を気にせず気軽に来やすいですが
 常駐の学習支援員一人の対応では限界があります。
 利用人数が増えるにつれ、ボランティアの人手・時間調整も必要になります。

3.支援される側の個々の事情に配慮
 様々な事情により来所できない子供ももちろんいます。
 特に小、中学生は遠くまで行くことができません。
 富士山駅近くの子供はひとりで来られますが、それ以外は親の送迎になります。
 アウトリーチ型を取り入れるか、別の場所に新たに設けるかなどの支援方法を
 取り入れられれば支援の範囲が広がります。(近くの図書館、公民館、コミュニティセンター、喫茶店…などなど)

事業報告の後はグループ討議でした。

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講師の先生方のご講演や事業報告を聞いて、感じたことやご意見などを
自由に話し合い、最後に各グループごとに発表をしていただきました。
自治体の現場、学校の現場など…それぞれの場所でそれぞれの悩み、それぞれの課題があり、
ほかの機関と連携していくことの大切さをみなさまお話ししてくださいました。
他にも、
・困窮世帯は新聞を読まないのではないか?
・不登校になった子どもは、絶対に学校に戻らなければならないのか?
 読み・書き・そろばんができれば、絶対に学校に戻らなければならない、ということはないのではないか?
といったご意見を頂きました。
納得のあまり、思わずうなってしまいました。