R7.11.8 「そのモヤモヤ、話してみませんか?」ひきこもり経験者と語る『しゃべり場』レポート

11月8日に身延町総合文化会館で「一歩踏み出した経験者とのしゃべり場」というイベントを開催しました。

身延サポステ出張相談の一部として、ひきこもりを経験した当事者の方々が自らの体験を語り、参加者と対話する座談会を行う特別企画でした。

ひきこもりと聞くと、「部屋に閉じこもって…」という一面的なイメージを抱いてしまいがちじゃないかなと思いますが、その扉の向こう側には、一人ひとり全く異なる背景と、言葉にならない葛藤があります。
今回の「しゃべり場」は、そんな当事者のリアルな声に触れる、温かくも貴重な時間となりました。

 

まずはゲームでアイスブレイクをしました!

その後は、輪になりそれぞれ自身のことを語り合いました。

おひとりおひとり持ち時間を取り、自身のことを語ってもらいました。
みなさんからお話いただいた内容をまとめたレポートです。

 

トークテーマ:ひきこもっていたとき、どんな気持ちだった?

ひきこもり渦中の心境について。経験者の方々は、静かに、しかし力強く言葉を紡いでくれました。

共通していたのは、将来への漠然とした不安と、何もできていない自分への焦りでした。

「朝、家族が仕事や学校へ行く音を聞くのが辛かった」
「社会から取り残されていく感覚だけが、日に日に強くなっていった」

学校でのいじめや人間関係のつまずきがきっかけだった方もいれば、「これといった理由はないんです。気づいたら外に出るのが怖くなっていた」と話す方もいました。
家庭が必ずしも安らげる場所ではなく、心休まる居場所がどこにもなかったという経験も語られました。

見えない壁の内側で、彼らは罪悪感や無力感と、たった一人で向き合っていたのかなと感じました。

 

トークテーマ:ひきこもりから外へ出た小さなきっかけ

固く閉ざされた扉が、再び開くきっかけは何だったのでしょうか。

これもまた、実に様々でした。

ある方は、「家族の病気」がきっかけだったと言います。「自分がしっかりしなければ」という思いが、外へ向かう強制的な力になったそうです。
また、経済的な問題から「このままではいけない」と、現実的な必要に迫られて一歩を踏み出した方もいました。

一方で、人との出会いが大きな転機になったという声も多く聞かれました。
根気強く訪問してくれたカウンセラーや、支援機関のスタッフとの出会いが、「もう一度、誰かと話してみたい」という気持ちを呼び起こしてくれたのです。

印象的だったのは、その一歩が決して大きなものではなかったということ。
「まずはコンビニまで行ってみる」「決まった時間に散歩する」――。
そんな本当に小さな成功体験の積み重ねが、自信を取り戻すための大切なリハビリになったと語ってくれました。

 

トークテーマ:今、どんな状況?

現在、経験者の方々は、それぞれのペースで社会との関わりを取り戻しています。

「すぐに正社員を目指すのではなく、まずは週に数日のアルバイトから始めました」
「昼夜逆転を直すために、朝は無理やりにでもカーテンを開ける、というルールを自分に課しています」

焦らず、自分にできることから始める。その中で、生活の工夫や仕事との向き合い方を見つけている様子が伝わってきました。

また、サポステのような場所で「同じような経験を持つ仲間と話せること」が、何よりの支えになっていると、多くの方が口を揃えていました。
一人じゃないと感じられることが、次の一歩を踏み出す勇気につながる、あらためて強く感じました。

 

終わりに

フリートークの時間では、それぞれ質問や返答が飛び交い、さらに盛り上がってました。

ひきこもりは、「孤立」していることが多いです。
だからこそ、誰かと「しゃべる」こと、自分の気持ちを安心して話せる場があることは、回復への大きな力になると思います。

もし今、あなたやあなたの周りの誰かが一人でモヤモヤを抱えているなら、まずは誰かにその気持ちを聞いてもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。
この「しゃべり場」は、その大切な一歩を応援してくれる、温かい希望に満ちた場所でした。